Ethereumは暗号通貨の時価総額において2番目に大きいブロックチェーンネットワークであり、同業界で最も有名なBitcoinの次に広く知られていると言ってもよいでしょう。そしてEthereumはこれまでの栄光に安住するのではなくその強固な基盤に基づいて継続的な革新を続けることで、市場においてもBitcoinを追い越すような勢いを持つ最も機能的でその価値が重視された人気のネットワークであることは間違いありません。
しかしEthereumが持つ高度な機能とその人気の高まりによってネットワークの輻輳とスケーリング機能に大きな負担がかかることで、ユーザーへの対応速度は遅くなって費用もより高くなってしまいました。
そこでこの記事ではEthereumに常に存在するスケーリング問題に対する考えられる解決策の1つであるDanksharding (ダンクシャーディング) について説明していきます。
重要なポイント
- Ethereumのスマートコントラクト機能と世界的な人気によって同プラットフォームに大きな負担がかかっています。
- その後のネットワークの混雑によってガス代の増加や不当な処理時間が発生しました。
- Ethereumの混雑問題に対する2つの解決策にはShardingとその後継策となるDankshardingが挙げられます。
- DankshardingはEthereum上の取引におけるガス代や処理時間を最小限に抑えることを約束していますが、これを実際に行うにはセキュリティ上のかなりの欠点がまだ解消されていません。
“イーサリアム仮想マシン”って何?
Shardingとその後継策であるDankshardingを掘り下げていく前に、まずはイーサリアム仮想マシン (EVM) とは何でどのように機能するかを説明していきます。通称EVM (Ethereum Virtual Machine) はEthereumの背後にあるテクノロジーを処理する中核でスマートコントラクトの堅牢な機能を備えたネットワークを指しており、EVMのおかげでEthereumは分散型アプリケーションをサポートする最も広範なネットワークとして世に広まっていきました。
その他のプラットフォームにもこれと同様の機能がありますが、Ethereumの範囲、規模、サービスの品質に匹敵するものはありません。EVMを使用することで開発者は新しいテクノロジーやデジタル概念を試したり分散型インターネットの基盤を開発することが可能になりますが、EVMが持つ比類のない有用性と価値は一般的なネットワーク世界のスケーラビリティ、速度、トランザクションコストにおいてガス代と呼ばれる問題を引き起こしています。
これは明らかな解決策や相殺メカニズムがないまま10年間もEthereumを大きく悩ませてきた問題でもあり、2023年の今でもまだEthereumはBitcoinやその他の人気のあるアルトコインと比較すると高価で速度は遅いままなのです。そこで開発者はEthereumをユニークかつ堅牢なものにする為にスマートコントラクト機能によって、何一つ犠牲にすることなくネットワークの飽和状態を緩和する計画を立てました。そこで話に上がったのがShardingとDankshardingであり、これらはEthereumのスケーリング問題を解決するための最も有望な概念の1つとなっています。それではこれらをさらに詳しく見ていきましょう。
Ethereumが掲げるShardingの定義
Ethereumのスケーリングの問題が本格的なネットワークの混雑を引き起こしたため、Ethereumの作成者と専門開発者は振り出しに戻って恒久的なスケーリングソリューションを模索した結果Shardingのアイデアが浮かび上がりました。これによってネットワーク混雑の問題が軽減されて、さらに1分間に最大100,000のトランザクションの処理も実行できるようになりました。
では、実際にはShardingはどのように機能するのでしょうか?平たく言えば、ShardingはEthereumネットワークをシャードチェーンに分割して分離された方法でトランザクションの検証および処理の実行の為に使用されます。このソリューションの優れた点はネットワーク全体の検証プロセスを阻止できる点であり、Shardingを使用しない場合のEthereumのメインネット上の全てのトランザクションは既存する全てのブロックチェーンノードを通じて処理される必要があります。
この一連の検証プロセスによってネットワークインフラストラクチャに大きな負担がかかることで、速度の低下や費用の高騰や新規ユーザーの参入の難しさに繋がっています。そこでShardingを取り入れることEthereumをより小さなチェーンへと分割してそれぞれが数千のトランザクションを同時に処理するのです。各シャードチェーンは自律ネットワークとして機能してEthereumメインネットよりも大幅に少ないブロックを収容するために迅速なトランザクションの実行が可能になります。
Shardingを取り入れることで、Ethereumネットワークの最も根本的な問題を解決できる可能性があるためにShardingはこれまでで最高のアップデートとみなされています。ただしShardingを適用するには既存のEthereumメインネットワークの構造に大幅な調整が必要なためにShardingの実装はまだ行われていません。
そしてEthereumの作成者やコミュニティ開発者たちがShardingの実装が非現実的であると知り、しばらくの間はShardingの開発が止まる事もありました。しかし、その間にも多くの作成者たちがEthereumのスケーラビリティの問題を解決するためにオフチェーンロールアップやその他の概念を提案してきました。そして2023年に私たちはShardingのコンセプトを引き継ぐ正当な後継者であるDankshardingを目の当たりにすることになりました。
Dankshardingの説明
“EIP 4844”としても知られるDankshardingは、Ethereumの研究者であるDankrad Feist氏によってEthereumのスケーラビリティの問題を根本的なレベルで解決するという使命を持って考案されました。ちなみにDankshardingはShardingと全く同じ構成を持ってはいませんが、Shardingが持つ概念を利用して安価なデータをネットワークに配信することができます。Shardingの概念とロールアップコンセプトの革新的な融合により、Ethereumをスケーリングしてトランザクションと処理期間を短縮するための恒久的なソリューションを目指しています。では、EthereumにおいてDankshardingはどのように機能するのでしょうか?
これまでに見られなかった全く新しいこのコンセプトはトランザクションの分析と処理のロールアップ手法を利用していることから、ロールアップはその点において革新的なスケーリングソリューションとなります。多数のEthereumトランザクションを1つのバッチにまとめてオフチェーンで検証を行う事からEthereumのメインネットの処理負担の軽減に繋がります。
ただし、ロールアップはトランザクションデータがロールアップバッチに完全に転送されることでプロセス全体が若干冗長になるため完璧とはまだ程遠いです。結局のところ、ロールアップテクノロジーはEthereum上の混雑を軽減する為に作成されましたが、データ処理が非効率であるためトランザクションのスループットを劇的に向上させることはできませんでした。
ここでDankshardingが関わってきます。Shardingの原理を利用して関連するデータ ポイントのみをロールアップノードにバッチ処理することで、ロールアップが持つコンセプトをそのままに実現することができるのです。ここでは例として、Ethereumネットワーク上に100,000のトランザクションがあると仮定します。Dankshardingを使用する事でロールアップによってトランザクションデータの一部のみを取得して処理できるためプロセスが大幅に効率化されます。さらにDankshardingによってロールアップデータを永続的ではなく一時的なものにすることができ、Dankshardingを使用しなければブロックの検証に使用されるトランザクションデータはロールアップデータベース内に永続的に保存されてしまい、何十億もの不要なデータバイトが使用されてネットワークへのさらなる負担へと繋がってしまいます。Dankshardingを使用することで、トランザクションデータをロールアップチェーンにて検証に必要な限り利用することができます。
データ可用性サンプリングのおかげでこの画期的なコンセプトは利用可能となりました。これによって、ネットワークはブロックチェーン全体を使用せずともトランザクションデータベースから必要なデータ部分のみを取得することができます。データサンプリングを使用する事でロールアップはデータサンプリングされたBLOBを使用してトランザクションの検証に必要なデータのみを受け取ることから、これによってメインネットに負担をかけることなく複数のトランザクションがまとめて実行されるのです。結果として、Dankshardingはロールアップを数千件のトランザクションを数秒で処理できる非常に効率的な検証メカニズムへと変換することができるのです。
したがって、DankshardingはEthereumを取り巻くスケーリングのジレンマを解決するShardingとロールアップの2つを上手く組み合わせた論理的なソリューションとなります。現在では排他的なオンチェーンのコンセプトがほぼ実行不可能の中、Dankshardingはこれら2つのスケーリングソリューションの最良の中間点となる可能性があります。
Dankshardingのメリット
前のセクションでも概説したように、DankshardingのコンセプトはEthereumのスケーリング問題を完全に解決できる革新的なアイデアとして機能することであり、Dankshardingがますます具体的になるにつれてEthereumユーザーはパレート改善を受け取る可能性があります。EthereumネットワークにDankshardingを適用することで得られる実際的なメリットを次に説明していきます。
割引かれた取引手数料
Ethereumがスマートコントラクトの頼りのプラットフォームになって以来、dApp作成者にとってその取引手数料は決して満足のいくものではなく、場合によってはガス代がETH取引の元本金額を超える場合もありました。つまり量の少ないトランザクションではそもそも実行する価値がなかったために、Ethereumネットワークユーザーはトランザクションを慎重に選択しなければなりませんでした。
さらにEthereumの高まる人気によって、選ばれた個人が基本取引手数料にチップを追加するようになって平均的なユーザーの価格ベンチマークがさらなる上昇へと繋がります。したがって、現在のガス代の状況はEthereumネットワークにとって制限的であって非常に好しくありません。ただし、Dankshardingを取り入れることでこの問題を永久に解決することが約束されます。
現在ではデータ処理のニーズが急激に増加しているため、高額なガス代がEthereumネットワークに問題を引き起こしています。Ethereumの中心にあるのは複雑なEVMプロトコルであり、それはトランザクションを検証してネットワーク内の全ての既存のブロックを再確認するためにかなりの動作能力を必要としますが、Dankshardingによって処理間隔をはるかに小さく管理しやすい部分に分割することでこの問題を解決することができます。したがって、単一のトランザクションで取引を検証して実行するために必要な処理能力はごくわずかで良いのです。
したがってDankshardingはEthereumコミュニティに蔓延している最も重大な問題を軽減する立場にありますが、結果としてネットワーク全体のトランザクションアクティビティの増加に繋がってしまいます。しかし、Dankshardingは最終的にEthereumの成長を促してEthereumを国際決済において競争力のある選択肢にする機会を得ることができます。現在のETHコインの流通量はその他のコインに比べてはるかに遅れていますが、アルトコインとDankshardingの組み合わせによってこの傾向を発売後数週間で逆転できる可能性があります。
トランザクションの処理能力の向上
Dankshardingは手数料の削減に加えてより迅速な取引も約束しており、すでに概説してきたようにDankshardingは新しいブロックを検証するためにトランザクションデータの一部のみを利用することから、全てのトランザクションはロールアップ内で処理されることから検証に必要な時間はわずか数秒ほどになることから、これでユーザーは各トランザクションの処理の実行に数時間も待つ必要がなくなりました。
Ethereumの経営陣も説明するように、DankshardingのロールアップとBLOBトランザクションの組み合わせによって数千のトランザクションをバッチ化してそれらを同時に検証することができます。したがって、数千のトランザクションがこれまで単一のブロック検証に十分であったのと同じ量の電力で処理されることになります。
Dankshardingが持つメリットはネットワークユーザーを不当に長い処理時間から解放するためにガス代の削減と同じくらい重要になります。しかし現在のEthereumの処理期間にはまだ改善の余地が多いことから、時間に敏感なトランザクションのニーズを持つユーザーの多くはこのプラットフォームを避けています。しかしこれからEthereumがDankshardingを取り入れられることでトランザクションの処理時間を最小限に抑えられるため、新たなユーザーの獲得に繋がることになります。
ネットワークの全体的な効率化
最後に、Dankshardingが抱える重要性は即時のガス代の削減や処理時間の最小化を超える可能性があります。すでに述べたように、EthereumはWeb 3.0の革新の波により良い環境を作り出すことを目的としたテクノロジー主導のネットワークであることから、DankshardingはEthereumの基本機能を促進することで多くの開発者が低コストかつ高効率でのdAppの作成を実現可能にしてくれます。
Ethereum上に構築されたdAppsは現在ネットワークの速度、ガス代、全体的な効率によって制限されていますが、Dankshardingによってより高速に実行されるトランザクションや安価なガス代を備えたEthereumベースのアプリをこれから多くの人が目撃することになるでしょう。したがってDankshardingはEthereumが主力の投機的暗号通貨と競争するのを支援する優れたソリューションとなるだけでなく、今後のWeb 3.0環境におけるEthereumの優位性への未来の扉となることは間違いないでしょう。
Dankshardingが抱える最大の問題
これまでにDankshardingの概念はEthereumの近い将来にとって重要であることが証明されていますが、この新しい実践が機能しなければEthereumには核心的な問題を解決することなくネットワークの混雑を緩和する一時的なスケーリングソリューションしか残されていないことから、長期的に見ればDankshardingはEthereumのセキュリティを危険にさらすために完璧な解決策とはならないようです。
これまでに説明したようにShardingのアイデアはオンチェーンの性質によって高い人気を誇っていましたが、Shardingの概念を簡潔に言えばトランザクションの実際のデータをEthereumブロックチェーンネットワーク内に保持することから、これはプラットフォームが提供する気密性の高いセキュリティを損なうことなくEthereumのトランザクションをより安く速く提供できることを意味しています。
しかし、Shardingが徐々にDankshardingのアイデアに変化するにつれて開発者は妥協せざるを得なくなりました。すでに説明したように、DankshardingはShardingと同じ方法論を使用してBLOBを運ぶトランザクションを作成しますがオンチェーンでのブロック検証はサポートされないことから、オフチェーンでのブロック検証における安全性と信頼性は非常に低い事からこの変更はEthereumユーザーの意見を二分割にしました。さらに、これはEthereumとブロックチェーン全体の当初の約束に反しているために多くのユーザーがこの慣行に不満を抱えています。
さらにDankshardingが引き起こす論争は単に一般原則に対するものだけでなく、Dankshardingには実際に多くの危険性を含んでいます。BLOBトランザクションを含む小規模なロールアップははるかに少ない暗号化で小規模な準ブロックチェーンネットワークに侵入する必要があるため、悪意のある攻撃者は簡単にターゲットを見つけることができます。さらにロールアップ自体は堅牢なセキュリティを備えていますが、それが持つセキュリティ対策はEthereumネットワークの保護メカニズムとは比較できないほど脆弱なものになっています。
まとめ
Dankshardingは巨大なEthereumの次の大きな飛躍の鍵となる可能性が非常に高く、Ethereumネットワークはここ数年で堅牢なスマートコントラクト機能を提供しますがユーザーが抱える多くの需要の対応に非常に苦労してきました。しかしEthereumがDankshardingを取り入れることで、より高速かつ安価なトランザクションを実現する為のその他の機能の犠牲などが必要なくなります。
ただしDankshardingはセキュリティ上の問題もいくつか引き起こしていることから、悪意のある攻撃者やその他のデータ災害に対してEthereumの機能を弱める可能性があります。さらに現在界ではDankshardingはまだ開発中であるため、これからEthereumの作成者はセキュリティのジレンマを解決する為により最適なソリューションを思いつくことがあるかもしれません。